名探偵コナン 業火の向日葵

【評価】★★★★☆
シリーズの中でもプロットが良い。定番と新鮮さのバランスが絶妙。

【紹介】
お馴染みの名探偵コナン映画第19作。鈴木治郎吉は世界に7枚存在するといわれるゴッホのひまわりを集めた展覧会「日本に憧れた向日葵展」を開催することに。しかし、そのうち一枚を日本に輸送する際に、ひまわりを怪盗キッドに奪われてしまい、、、。

【批評】
ゴッホのひまわりに着目してコナン映画を作る、という発想がすでに勝っている。

そもそもひまわりはミステリーとして面白い。全7作あるという事実。2作目のひまわりは芦屋で焼失したという歴史。そして5作目に残る贋作疑惑。さらにその5作目が日本にあるということ。
これらの事実だけでも興味深いが、そこに、「2作目が実は残存していた」というところから始まる物語は、コナンでなくとも絵画ミステリーとして成立しそうだ。

そこに、コナンの要素が効果的入ることで、観客を飽きさせない仕組みになっている。つまり、コナンvs怪盗キッドの構図だ。

ちなみにこの映画にトリックはない。犯人を追いつめるロジックもほぼない。いわゆる謎解き要素は「なんでキッドがこんなことをするのか?」に絞られる。
怪盗キッドは訳あって宝石以外は盗まない主義であり、また、人を傷つけるようなことは絶対にしない、という前提を知っていないと厳しいかもしれないが、劇中で一応ちょっとだけ、説明されるので問題ない。

また、コナン映画定番のアクションシーンは、なかなか頑張っていたと思う。激しく入れ替わるカメラワーク(視点)と、実写ではありえない効果を使って、実写以上の躍動感が表現されていた。ラストの脱出シーンは、もはや何が起きているのかよくわからなかったが、まぁそれも良しとしよう。


さて、一方で真犯人の動機の酷さに批判があるようだが、それは確かにそうかもしれない。動機の理不尽さとしては、コナン映画史最悪の呼び声高い「天国へのカウントダウン」を凌ぐかもしれない。
でも、個人的には「プロのプライドとして贋作が許せない」ってのはありなんだよな。芸術に関わる人は、一般人とはどこか違う価値観があって良いと思う。ただ、それは良いので、じゃあなんであなたは贋作だと判断したのか、その説明が無さすぎる。プロならプロとして、贋作を疑わない理由を教えてほしかった。そこがちゃんと語られていれば、一気に重厚感あるフィナーレになったんじゃないかな。その点は少し残念だ。

もう1点、残念なところをあげると、それは灰原哀だ。
劇中で「見つめているだけじゃ駄目だ」とアドバイスされ、心動かされているにも関わらず、最後の最後までやっぱり見てめているだけで、終わってしまっている。ラストシーンで、「湖の下にコナンがいるかも」ってときに助けて欲しかったなぁ。それでこそ、「見つめているだけ」から「行動した」ことになるんじゃないか。

そうは言っても、映画として面白いことは間違いない。コナンファンは当然のこと、そうでない人にもおすすめしたい。

なお、ゲスト声優が犯人役をやってしまってオチがバレバレ問題は、もはや治らないので、私は気にしないことにしている。