イントゥザウッズ

【評価】★☆☆☆☆
ディズニー史に残る駄作。救いは冒頭15分。

【紹介】
おとぎ話の主人公が森の中で交錯、さらにその後のストーリーを描いたミュージカルを、「シカゴ」のロブ・マーシャルが映画化。

【批評】
見ていて退屈な映画だった。

この映画は大きく前半と後半に分かれている。前半は赤ずきん、ジャックと豆の木、シンデレラ、ラプンツェルが、それぞれの定番ストーリーを進めながらも、主人公のパン屋を通して森の中で交錯する話。後半は、各々のストーリーを終えた後で、新たに出てきた巨人という脅威との戦いを描いた話。

前半については、冒頭の15分はなかなか良かったと思う。音楽も印象に残るし、それぞれのストーリーの登場人物がいっせいに森の中に進んでいくシーンは、「この先何が起こるんだろう?」という、ワクワク感はあった。
が、そこがピーク。
第一に、我々は当然童話を知っているわけで、それを改めて見せられるからには新しい演出やら解釈やらがいると思うんだけど、(歌以外に)それがない。むしろ、4つの話を詰め込んだばっかりに、1つずつが絶望的にうすっぺらい。ラプンツェルに関しては、王子の目が見えなくなっていることが発覚してから快復するまで15秒くらいだったと思うんだけど、もはやいるかねそのくだり。
さらには、王子様が足りなくなったばっかりに、兄弟にするというとりあえず設定。
決定的に問題だと思ったのは、かかとを削るだの目を潰すだの、グリム童話の不条理なグロさを引き継いでいて、いやそれディズニーを見に来た人が求めてるはずないだろと。細かいけど、シンデレラがガラスの靴じゃなくて金色の靴って、ディズニーファンには納得できないと思うよ。
あと、ジョニー・デップを客寄せパンダみたいに使うのはどうかと思う。今回は本当にちょい役で、彼を期待した人はがっかりだったことだろう。それ以上に、ジョニー・デップ狼が岩の上でコントさながらに「ワオーン」と鳴く寒いシーンを見た瞬間、「あ、この映画は駄目だな」と確信した人も少なくないはず。

後半はさらに絶望的。とにかくストーリーの破綻がエグい。特別な理由なく人がすぐ死ぬ。魔女は勝手に絶望的になって、「そうです。どうせ私が悪いんです」みたいな感じでいなくなる。王子が意味なく浮気する。巨人が弱い。
納得できないことが多すぎて、もはや何の映画を見ているのかわからなくなった。


そもそもこの映画は構造的な欠点があると思う。
それは、舞台が常に森の中ということ。ミュージカルの場合、その性質上、場面はそんなにころころと変わらないと思うし、客側にもその理解がある。しかし、映画の場合は、背景が常に森なために絵が変わらないのはかなり退屈。それを払拭するほどの脚本があるわけでもなく、映画化には向いてなかったというほかない。

そんななかでもよかったのは、魔女役のメリル・ストリープと、出演者の歌がうまいこと。

でもやっぱり映画としてはいかん。